よし、今日はだいぶ進んだぞ!
あんまり根詰めてもよくないからここらでティータイムにしよう!
カチャン
・・・あ!
やってもうたーーーー!
「せっかくここまで進めたのに!!もう首をくくるしか」
はい、ちょっと待って下さい。
そのシミ、まだ何とかなるかもしれません。首をくくるのは試してダメだったらにしましょう(笑)
というわけで、今回は鉛筆画作成中にうっかり紙を汚してしまった時の対処方法について書いてみます。
予め申し上げますが、今回の記事はかなり危険です!
全て私が試した限りでの対処方法となりますので、科学的根拠は全くありません。
修正がうまくいかなったり、状況が更に悪化する可能性がありますので、試す際は全て自己責任でお願いします。
今回の記事を書くにあたって、描き途中の絵に犠牲になってもらいましょう。
会社員だった頃、会社で仕事しながら描いていたカメラの絵です(仕事しろよ)
紙はmuse社のKMKケントです。
描写中の鉛筆画にわざとコーヒー(ブラック)を垂らしてみました。左から1日前、1時間前、垂らした直後、とあえて時間をずらしています。また、描写エリアと白紙エリアの両方で試せるようにしました。
このシミを取り除いていきます。
今回検証するにあたって、5つの道具を用意しました。
・無水エタノール
・キッチンハイター
・紙やすり
・綿棒
・マスキングテープ
無水エタノールは薬局などで入手できる薬品です。揮発性が高く、主に消毒などに使用します。カメラのレンズやセンサーの清掃などに使われることもあります。
検証開始!!
揮発性が高いということは、紙につけても影響は少なく紙に染み込む前に汚れを落とせそうな感じがしましたので早速綿棒につけて汚れを落としてみます。
怖いのは紙は水を吸うと変なシワができていまうこと。
雨とかに濡れてゴワゴワになった本を一度は見たことがあると思います。アレですね。
とりあえず1時間経過したシミから落としにいきます!
うん?
確かに染み込む前に蒸発するから水濡れシワは起きない。だけど
汚れがほとんど落ちていない
うーん。もっと多くつけてみるか?
いや、さすがに垂らしすぎるとシワができそう。
とりあえず、無水エタノールはあまり効果がなさそうなので、キッチンハイターを試します。
ハイターは台所で使うお馴染みの漂白剤ですね。
先ほどと同じく、真ん中の汚れにチャレンジしてみます。
軽く綿棒につけて馴染ませるようにシミにつけていきます。
おっおっおっ!
シミが取れました!
さすがハイターさん!
・・・だけど
やはり水濡れシワが発生しました。
とりあえず水濡れシワを戻す方法は後で考えるとして、他の汚れを綺麗にできるかどうか試します。
1日前のシミもとれました。
試した限り、1日前のシミの方が1時間前のシミよりも取れづらかったので、やはりシミがついたのに気が付いたら早めに処置をした方がよさそうです。
そして問題は、この水濡れシワをどうやって発生させないようにするかです。
そもそも水濡れシワができるのは、紙は水分を吸うと膨張し、乾くにつれて元々の形から変形しながら縮小するという性質があるから。
絵画には水張りという紙をパネルに張る技法がありますが、あれはまさに紙の水濡れシワを発生させない為の手段です。水で紙を伸ばした後に、紙が変形しながら縮小しないように固定するという方法ですね。
つまり、水張りと同じようなことをすれば、水濡れシワを抑えつつ汚れが落とせるのではないかと考えるわけです。水張りは紙全体を固定するのに対し、極小範囲の汚れを取るだけなら紙の一部分だけを固定するだけでもある程度効果があるはずです。
以前、水濡れした本は冷凍すればある程度シワがなくなるというを聞いたことがあります。おそらく低温状態で紙が縮小した方がシワが少なくなるということではないかと思います。
考えた末、以下の方法を試すことにしました。
染み抜きの手順
①汚れのついた部分の裏面からマスキングテープを張る。少し広めに張っておいた方が安心。
②表面からハイターで汚れを取る。紙がハイターを吸いすぎないようにティッシュで調節しながら慎重に汚れを除去する。
③処理をした紙をいらないスケッチブックなどに挟み、紙に圧力をかけるためにスケッチブックの周辺を輪ゴムで止める。
④スケッチブックごと冷凍室に突っ込みます。面白い図ですね。
⑤一晩経ったら、冷凍室から出します。スケッチブックがキンキンに冷えてます(笑)
⑥常温になってから背面のマスキングテープをはがす。
⑦元々描写があったところは鉛筆で再度描き込む
修正完了!ビフォーアフター
どうでしょう!
いい感じにシワを抑えつつきれいにすることができました!
※周りが鉛筆で汚れているのは元々です。
検証後の考察
ハイターの成分のせいなのか、若干汚れを取った部分が固くなりましたが、見た目上ではほぼわからないレベルです。
難点はハイターの匂いが紙につくことでしょうか。額装してしまえばわからないでしょうが、依頼品の場合は厳しいと思います。
繰り返しになりますが、試す際は自己責任でお願いします。これよりもっといい方法があると思いますし、キッチンハイターの成分が長期間保存した後に変質する可能性もあります。フィキサチーフとの化学的な関係も気になりますし、さらに踏み込んだ検証はまた機会があればやってみます。
むしろ、紙の染み抜きについて専門知識を持った方がこの記事をご覧になっていたら、ぜひご教授願います。正しい手順がわかれば多くの画家様に役立つお話ができると思いますので、いらっしゃいましたらメッセージを送っていただければ幸いです。
紙やすりを使う方法
番外編として紙やすりを使う方法を紹介します。
これはすごく単純な話で、紙の表面上の汚れを紙ごと削ってしまう方法になります。
この方法が使える条件は2つあります。
①表面上の汚れであり、裏面まで染み込んでいないこと
②人物の顔など、階調表現がシビアな場所ではないこと
まず、紙を裏面から見て、染み込んでいたらアウトです。削ったら穴が開いてしまいますからね。
紙やすりを使うと、紙の目が削られた状態になりますので、その場所を均等に塗るのは難しいですし、削っていない場所との境界が若干見えます。
グラデーションの上などでは行わない方がいいでしょう。
このように簡単に行えますが、削れた粉が出ますし、削った部分が若干ざらつきます。
最後に
今回は紙についたシミの落とし方について触れてみました。
紹介した2つの方法はあくまで最後の手段であり、序盤の段階で汚してしまったら最初から描き直した方がいいです。完成間近の作品を汚してしまい、失意の中で破り捨てるぐらいなら一度試してほしいという気持ちで記事を書いています。
すごく当たり前のことですが、
鉛筆画の近くで飲み物を飲んだりしないようにしましょう!!
炭酸飲料とか、蓋を開けたときにプッシューって吹き出たりしますからね。
私は今まで一度だけレッドブルでやらかしたことがありますが、それ以降は机付近に飲み物を置かないようにしています。
今回は以上です。
皆様が充実した鉛筆画ライフが送れることを祈っています。